【カバン二大合繊】「ナイロン」と「ポリエステル」ってなに?

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ナイロン ポリエステル どっち

カバン用の生地は衣服の生地とは基本的には違います。

何故なら体の上に着る服とは異なり、物を入れることを前提とするカバンにはそれ相応の強度が求められるためです。

そんなカバンに使われる生地で最も多い素材は何でしょうか。

革?キャンバスやデニムなどの綿?

答えは合成繊維です。

アウトドアやスポーツ、毎日の通勤通学など日々過酷な環境にさらされるカバン。

そんな日々過酷な環境にさらされるカバンには軽量かつ高強度の合繊(合成繊維の略)は必要不可欠な素材なのです。

この記事では、一般的にカバンでよく使われる「ナイロン」と「ポリエステル」の紹介をしていきます。

※一般的にはアクリルを含めた「三大合成繊維」と呼ばれますが、カバン製品で使われる生地はナイロンとポリエステル生地が圧倒的に多いのです。
そのため、カバンが主であるこの記事ではあえて「二大合繊」と呼ばせていただきます。

目次

カバン界の二大合繊「ナイロン」と「ポリエステル」

合繊で作られたバッグは様々なシーンで使われている

アウトドアメーカーやスポーツメーカーから販売されるカバンはほぼ合繊で織られた生地で作成されています。

それは何故でしょうか。

理由は簡単!「軽くて強い」からです。

合繊がまだ一般的ではなかった頃、カバンは動物の革、麻や綿の織物で生産されていました。

天然素材をメインに使ったカバンのイメージ

今でもクラシカルなバッグやカジュアルバッグで革やキャンバス生地は使われますが、パフォーマンスを求められるアウトドアバッグやスポーツバッグでは基本的にメインで使われることはありません。

それは強度、重量に圧倒的な差があるためです。

天然繊維や革よりも軽く、摩擦に強く、吸湿性も低いので水に濡れても乾きやすい。

そんなパフォーマンスに優れた2つの合繊ですが、同じ合繊であるナイロンポリエステルはどのように使い分けられているのでしょうか。

2つの生地の特性を見比べるとその理由がわかってきます。

ナイロン

ナイロンとは、主に石油を原料とするポリアミド(PA)系合成繊維の総称をいいます。

その歴史は後述するポリエステルよりも古く、世界初の合成繊維といわれています。

もとはデュポン社(ナイロンの発明者・W.カロザースが所属していたアメリカの会社)の商標名でしたが、ナイロンという呼称があまりにも広く普及してしまったため、ポリアミドのことをナイロンと総称するのが一般的になっています。

ぽんず

ちなみにナイロンの名前の由来は諸説あるのですが、
NO RUN(糸がほつれない、伝線しない)から付けられた説が有力です。

その他にもNY(ニューヨーク)からLON(ロンドン)まで糸を通しても切れない!なんて説もあります。

以下は1938年世界万博でナイロンが発表された際の有名なコピー文です。

「石炭と水と空気を原料とし、鋼鉄と同じくらい強く、蜘蛛の糸のように細く、しかし、どの一般的な天然繊維よりもはるかに弾性的な繊維」

開発当初は女性用ストッキングなどに使用されていましたが、その後に特性を活かし開発を重ね、現在はアウトドアウェアやバッグ、インナーや雨具と、非常に多くの製品に利用されています。

「ナイロン6」と「ナイロン66」

一般的なナイロン生地の繊維には、ナイロン6(PA6)とナイロン66(PA66)とがあります。
ざっくり言いますと、「ナイロン6はより染色性に優れ、ナイロン66はより耐熱性に優れる」という特徴があります。
耐熱性はナイロン6の融点が225℃(耐熱温度は80~140℃)に対して、ナイロン66は265℃となります。
引張強さ、圧縮強さといった強度面でもナイロン66のほうが優れた値を示します。
反面、染色性ではナイロン6が優れており、強度よりも外観を重視する衣服、布などではナイロン6が積極的に採用されています。

〇ナイロンのメリット

摩擦に強い : ナイロンで織られた生地は綿の約10倍摩擦に強いといわれている。

軽い : 綿などの天然繊維と比べると格段に軽く、ポリエステルを比較してもナイロンの方が軽い。

伸縮性が高い : 伸度が大きく弾力性に富み、シワになりにくい。伸びがある分破れにくい。

染色性 : 発色性が高く、色移りしにくい。

カビや害虫の影響を受けにくい : 石油を原料としているためタンパク質などをエサとするカビや害虫が発生しにくい。

汚れが落ちやすい : ナイロンは吸湿性が低いため、汚れが繊維の表面にとどまるので簡単に洗い落とすことが出来る。

耐薬品性がある : 汚れやカビが付いてしまった場合(混合されている生地にもよるが)、一般的な中性洗剤か弱アルカリ性のものを使用して洗う事が可能。※ただし酸性には弱いので注意

×ナイロンのデメリット

黄変・イエローイング : 日光に含まれる紫外線や車などの排ガスの影響で黄変を起こし、白い生地の場合、黄色く変色してしまう。また、それにより生地の強度も低下する。

高コスト : 同じ合繊であるポリエステルと比べ原価が高いため、生地の値段も高め。

耐火性が低い : 「熱」には比較的強いが、原料は石油なので「火」そのものには弱く非常に燃えやすい。(ただし500°近くまで耐えられるアラミド繊維などは除く)

昇華プリントに適さない : ナイロンは熱に弱いので伸縮したり変色する場合があるため昇華プリントには不向き。

カバンとナイロン

これらは実際にナイロン生地を使用しているカバンの一部です。

上述したとおり、ナイロンは耐摩耗性に優れているのでアウトドアブランドやミリタリーブランドで特に好まれて採用されています。

直接地面に置いたり岩や固い草木、体と接触する機会が多いため、一般的な生地に比べてハードな環境下にも耐えうる必要があるのですが、それら諸条件を満たしているのがナイロンなのです。

ちなみに剛健なイメージを先行して説明してきましたが、カジュアルやビジネス向けのナイロン生地を使用したカバンも世の中には多く存在します。

ポーターに使われているのはナイロンのツイル生地です。フライトジャケットをモチーフに作成された話は有名ですね。

フェリージに使われているのもナイロンツイルなのですが、こちらはイタリアの創業120年を超える老舗生地メーカーリモンタ社製のナイロンです。色合い、発色が良いことで知られており、数多くのラグジュアリー、ス-パーブランドで採用されています。

ポーテージに使われているのは通常のナイロンの約7倍もの強度を誇り、耐久性にも優れたコーデュラと言われる生地で、シャリシャリしたタッチと毛羽立ちのある生地感が特徴です。

このように高機能・高品質な製品には欠かせない合成繊維、それがナイロンなのです。

ポリエステル

ポリエステルとは、エステル結合(−CO−O−)を持つ高分子化合物の総称で、世界でもっとも生産量の多い合成繊維です。(2番目に多いのがナイロン。)

ナイロンと比べ価格が安いのも大きな特徴で、それゆえに様々なカバンに幅広く使われています。

天然繊維に近い雰囲気であることの特性を活かした、毛羽立ちのあるコットンライクな生地が市場の大半を占めています。

これらは短繊維(スパン糸/スフ)で作られた生地で、ややざらつきのある生地感が頑強なイメージを与えることから、スクールやカジュアル向けのバックパックなど、低〜中価格帯の製品に使われています。

もちろん光沢感のあるポリエステル生地(長繊維(フィラメント糸))もありますが、ナイロンよりは品質が落ちるため、ナイロンの代用として使われることが多い印象です。

〇ポリエステルのメリット

軽い : 綿などの天然繊維と比べて軽い。

低コスト : 同じ合繊であるナイロンと比べ原価が低く、生地の値段が抑えめ。

耐熱性がある: 生地を染めるときの温度が高いため熱には耐性があり、化学繊維の中では比較的熱に強い。

昇華プリントに適している :  昇華転写プリントは、インクを熱で気化して素材に貼り付けるのだが、インクはポリエステルにしか定着しない。

カビや害虫の影響を受けにくい : ナイロンと同様に石油を原料としているためカビや害虫が発生しにくい。

×ポリエステルのデメリット

汚れが落ちにくい : ポリエステルの繊維は、他の衣類の汚れを吸い取ってしまう性質があり、汚れや黒ずみが溜まりやすく、吸湿性が低いので汚れが落ちにくい。

耐火性が低い : ナイロンと同様、熱には比較的強いが火そのものには弱く非常に燃えやすい。

繰り返しによる摩擦には弱い : ナイロンと比べ、繰り返しによる摩擦には強くなく、毛玉などができやすい。

カバンとポリエステル

これらは実際にポリエステル生地を使用しているカバンの一部です。

ポリエステルを採用するメリットの一つはコストです。

純粋に原材料がナイロンと比べ安価であり、さらにその流通量の多さからさらにコストを抑えることが大きなメリットとなっています。

もちろん昇華プリントを使いたいなどポリエステルの方がナイロンよりも適正があるから使うということもあるでしょうが、

実際に企画現場にいる身としては、

「コストを抑えたい。でも付属品などの機能は付けたい。」

といった場合にポリエステルを採用することが多い印象です。

単価の高いバッグならコストに余裕があるためナイロンを使えますが、お手頃価格の何万何千本と生産される、市場の大半のカバンは生地にそこまでコストをさける余裕なんでありません!

これは中級品を扱うバッグメーカーの悲しいリアルです!笑

ナイロンとポリエステルの見分け方

では実際に生地を見比べた時にどう見分けるかを紹介します。

見た目での判断

生地や製品の状態で見分けがつくか聞かれることがたまにありますが、

はっきり言いますと、見た目での判断はかなり難しいです。

ネット上で「光沢感があるのがナイロン、毛羽立ちがあるのがポリエステル」と書かれているのを見たことがありますが、これは正確な情報ではありません。

ポリエステル生地のとことで少し触れましたが、ナイロンでもポリエステルでも長繊維の生地なら光沢感は出ますし、短繊維の生地なら毛羽立ち感が出るからです。

生地の扱いに慣れている人であれば生地の表情やシワ感、タッチで大体はわかりますが、不慣れな人にはまず判断はつかないでしょう。

燃焼による見分け方

どうしても見分けたい、そんな時は「燃やしてみる」という方法もあります。

ナイロン
溶けながら燃え炎を離すと燃え続けない
毛が焦げたような臭い

ポリエステル
煤(すす)の多い炎を出して燃える
弱めの刺激臭

特徴的なのは燃え方です。

ナイロンはゆっくりと燃え、火を離すと止まります。
※ある程度着火したらそのまま燃え続けるので注意!

ポリエステルは黒い煙を出しながらガンガン燃えるので、気をつけないとボヤになるレベルです!

ただ自分の大切なカバンや衣服を燃やすのはリスク高すぎなので、ある種これは最終手段でしょう。

品質ラベルや製品情報を調べる

現実的な判別方法はこれでしょう。

今はカバンのような市場に出回っている製品ならインナーラベルや下げ札にどんな生地を使っているか記載されていますし、ネットで製品情報を調べることも可能です。

カバンの名前がわからなくてもGoogleレンズで調べれば大抵の製品は出てきますので、できればこの方法が無難なのでオススメです。

まとめ

最後に、ナイロンとポリエステルのメリットとデメリットを表でまとめてみました。

ナイロン ポリエステル メリット デメリット

今回は代表的なナイロンとポリエステルの情報のみに絞って説明をしましたが、ナイロンの中にも糸の太さや折り目の特殊なもの、ポリエステルの中にもナイロンよりも高価なものなど種類が本当にたくさんあります。

それを説明しだしたらこの一記事では書ききれないので、ナイロンやポリエステルの生地の種類に関してはまた別の機会に説明させていただきますね。

最後まで見ていただきありがとうございました。

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